「身近で発生する品質問題が解決せず困っているがどうしたらよいか?」
「再三、顧客からクレームが来る」
こんな悩みを解決したいという現場管理者の声を多く耳にします。
再発する品質問題の解決には、品質管理の基本であるいくつかの考え方
と対策手順があります。その中で、最も重要と思われるのが、管理者の
発想転換「気づきの品質管理」3つの対策です。
1.エラープルーフ化
エラープルーフ化とは作業ミス等による不具合が発生しないように、
あるいは発生しても影響の拡大を防止するようにあらかじめ工場の品質
管理のしくみを設計する概念を言います。
図で示すように、エラープルーフ化では、各工程で講じられる予防の
しくみの欠陥の穴をできるだけ少なく、小さくする多重防御のシステム
(スイスチーズモデル)を構築します。
そして、各工程における管理者の気づきが重要なポイントになります。
このエラープルーフのしくみの考え方を基に品質対策の方法について
以下に述べます。
2.流出を抑える3つの対策
(その1)検査
流出防止対策で最も手っ取り早いのは検査の実施です。まずは検査を
徹底し、顧客流出を止めます。検査の方法はいろいろな種類があります。
①自工程検査:作業者自らが後工程へ不具合品を送らないように検査する
②第三者検査:工程の最後に専門の検査員を置いて検査する
③巡回検査:管理層が現場を巡回して作業者、機械、製品の異常に気づく
ぞれの目的を考えて、また製品の品質状況に応じて検査方法、頻度等を
決めます。検査で重要な事は、不具合を発見したら「工程を止める」
「出荷を止める」ことです。この仕組みがないと、納期優先で、どんどん
不具合品が流れていってしまいます。
検査ミスを防ぐ方策としては、最近普及が進んできた「画像センサー」に
よる自動検査機があります。
また、ヒトによる全数検査方式として「周辺視検査法」を採用することで
従来の全数検査方式に比べ、長い時間の検査でも見逃しが少なくなる効果
があります。
(その2)現場の日常管理
例えQC工程図や作業指示書が完璧にできていても、製造工程ではいつも
その通りの作業ができるとは限りません。
例えば、熟練作業者が忙しく、経験1年未満の作業者が作業に当たらなければ
ならないこともあります。その場合はどうしたらいいでしょうか?
このような突発的な事態にどう対応するのか?を決めておく必要があります。
例えば作業者の行った溶接部分を、後で熟練作業者が必ず確認を行って、
不良の流出を防ぐ手順を確立しておきます。このような変化に応じた予防策
を講じることを4M変化点管理といいます。
特に現場の管理者に求められるのは「異常検出能力」「不確かさ検出能力」
「自工程完結能力」です。
大切なことは、手遅れになる前に「気づく」ことです。
(3)工程設計と製造準備
工程設計のアウトプットはQC工程図です。
QC工程図には、5Mの要素である人、機械、材料、方法、測定などの管理
項目を規定します。例えば、溶接作業は1年以上の経験を持った熟練作業者
(認定者)が、溶接作業手順書に沿って作業を行い、出来栄え確認、合格
基準を満たしていることを確認します。
このように、管理項目を規定し、漏れがないことを、例えば「工程FMEA」
で検証します。
しかし、新製品やアレンジ製品の製造に入る前の準備は必ずしも十分でない
まま、量産製造に移行するため、思わぬトラブルやミスが発生します。
量産前の準備段階で、実際に作業を行いながら、問題点を抽出する「作業分析」
は、 IE(Industrial Engineering)という作業分析・ 改善手法として有名な
手法であり、この手法を用いて分析すると、作業改善面と同時に、作業上
多くの品質問題(ヒューマンエラー)に発展すると思われる項目が数多く
発見されるはずです。
そこで実際に作業を観察する、またはビデオ撮りして繰り返し観察し
「問題点に気づく」ことが非常に重要な作業となります。気づいた項目は
もれなくQC工程図にフィードバックを行うことで多くのミスが防止できます。
以上3つの流出の未然予防対策を至急社内で整備し実施することによって、
品質は格段に向上します。同時に管理者は現場の状況にいかに「気づく」
ことができるか?発想の転換が必要になります。
そして今までの後追い品質管理から決別することが流出防止につながる
ものと確信しております。