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高崎ものづくり技術研究所の濱田です。
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組織運営を支配する暗黙のルール
経営者に求められているのはトップマネジメントとしての強力なリーダーシップです。そして組織を効果的に運用して成果を得なければなりません。しかし、工場には生産管理や品質管理は存在するが組織をマネジメントするための組織管理ルールの存在について重視されていないのが実態です。
1.組織マネジメントとは
大企業であっても、ISO9000が求める組織管理の機能を詳細に規定しているケースはあまり見られません。今までは明文化した組織管理規程がなければ管理・運営ができないというわけではありませんでした。しかし、現在では組織管理は企業の運営にとってはバックボーンとなるものです。暗黙のうちに運営していると、やがて組織内の統一性を欠くものとなり、組織力を十分発揮できなくなってしまいます。
往々にして、以下のような暗黙のルールが企業内には存在しています。
①社長が直接社員へ指示を出したり、報告を受けたりして、中間の課長部長にはその内容
は知らされない。従って課長部長も意思決定は極力行わず、部下に指示も出さない。
②ミスが起きると、個人が責められ、組織のフォローもなく、直属の管理者の責任は問わない。
③役割が分からない肩書の社員がたくさんいる(・・代理、・・主査など)。
④ライン組織に、課長1人、係長1人、担当1人などの串団子組織が存在する。
⑤業務の分担、指示があいまいで、特定の人に仕事が集中している。
⑥担当者が退職すると、引き継いだ人はまったくその業務内容が分からない。
組織全体の運営をおこなって行く責任は経営者が負い、管理職は与えられた範囲で権限を委譲され、組織を運営していく責任を持ちます。しかし、中小企業のオーナー経営者は、組織の意思決定を独自に決断することが可能で、そのため、社員はオーナー経営者の意向に沿って行動するようになり、経営者の言動イコール企業の暗黙のルールとなっている場合も多いのです。
組織管理は、従来から組織図、業務分掌などの断片的なルールは存在していますが、生産管理や品質管理のように体系化され、はっきりと明文化されたルールは存在しません。規定として標準化することは全く考えたこともないという企業がほとんどと思います。
組織管理の体系には、以下のような基本となる枠組みがあると考えられます。
①マネジメント3階層のルール
②組織形態のルール
③コミュニケーションのルール
④その他
では具体的にどのようなルールなのかを明らかにして見たいと思います。
2.マネジメント3階層のルール
「マネジメント」は、アメリカの経営学者P.F.ドラッカーによって提唱された概念であると言われています。具体的には、組織の目標を設定し、その目標を達成するために組織の経営資源を効率的に配分・活用し成果を上げるルーチンワークのマネジメントサイクル(PDCA)を回す活動とされ、経営者のビジョンをブレークダウンして実現するための具体的な機能、機関を指します。
ここでは、マネジメントの基本的な役割を示す「マネジメント3階層のルール」について考えてみます。組織の各階層の役職は、ただ年功序列による肩書として与えてはいけません。経営者、部長、・課長係長・主任とそれぞれ果たすべき役割が決まっています。各マネジメント階層に応じて、それぞれの役割、権限を明確にしておく必要があります。組織も、部、課、係と明確にその役割を「組織権限規定」「業務分掌」などで決めておきます。
但し、最近は迅速な意思決定が必要となり、何段もある階層組織では意思決定のタイミングが遅くなってしまうという欠点があり営業、開発などの企画型の組織では、部、チームなどの階層までとする機動的なフラットな組織が求められます。
組織は、営業、開発、生産など業務の分担を明確にすると同時に、マネジメント階層の役割を明確にし、権限移譲型の組織を作っていくことが大事な事なのです。
アメリカの経営学者チャンドラーは「組織は戦略に従う」と提唱しました。一方同じく経営学者のアンゾフは、チャンドラーとは全く反対の「戦略は組織に従う」という説を示しました。つまりトップの戦略と、組織とは密接に関係していることを示しています。
しかし、中小企業においては、人材には限りがあるため、「戦略は組織に従う(制約を受ける)」ことになります。そのために、先を見越して、戦略を実行できるマネジメント人材の育成を日ごろから意識して考えておく必要があるのです。
目指すべき方向を明確に示す一方で、余計な縛りを省いて、社員が自分の頭で考えて動く裁量を与えていく、それがこれから求められる組織のマネジメントなのです。
3.組織形態のルール
企業の組織や役所などの組織において、殆どがライン組織またはライン&スタッフ組織という権力集中・定型業務タイプのツリー状の組織で成り立っています。しかし、企業の課題解決を図っていく上でこのようなツリー組織構造では、課題解決に当たって柔軟な対応が難しくなっています。経営者が打ち出す経営方針・目標にそって、それを実現するための機動部隊が構築されなければならないのですが、中小製造業にとっては、限りある人材の中から、スタッフを育成していかねばならず、長期的視点での組織構築が求められます。
(1)ライン組織
ピラミッド組織または軍隊組織とも呼ばれ、トップからの指揮命令ルートと下からの報告ルートがはっきりするメリットがあります。ただし、複雑な業務指示が伝わらない、報告がトップまで上がるまでに時間がかかる等のデメリットもあります。また、官僚組織と言われるように、硬直化すると前例主義や自部門の利益だけを追求するようになります。
(2)ライン&スタッフ組織
ライン組織のなかにスタッフ部門を設けた組織で、スタッフは日常業務の指揮命令系ルートからは離れ、比較的長期の課題解決に取り組み、トップに対する提言や業務改善などを実施します。非定形型業務への対応は可能になりますが、弊害として、スタッフの目的が不明確な場合、役職を引退した人の腰かけ的ポストとなって形骸化している場合も多く見受けられます。
(3)マトリクス組織
ライン組織は残したまま、各部門を横に横断する形でメンバーを構成し、いわばマトリクスを形成する組織を言います。プロジェクト組織は、一時的にこのような組織形態をとります。
ライン組織の指揮命令系統を残したまま、プロジェクトリーダー指揮により行動するため、どちらを優先するかを業務によって決めておく必要があります。
組織の重要なポイントとして、環境変化に適応するため、様々な課題をスピーディーに解決していかなければ、企業の存続も危ぶまれるということです。最近はルーチン業務のライン組織とプロジェクト組織とを共存させる組織構成をとる企業が多くなっています。
4.コミュニケーションのルール
アメリカの経営学者のチェスター・バーナードは組織が成立するための要素は以下の3つであると主張しました。
①共通の目的をもっていること(組織目的)
②お互いに協力する意思をもっていること(貢献意欲)
③円滑なコミュニケーションが取れること(情報共有)
組織活動とは、トップが目指すべき目標を設定し、その目的のために、役割を分担し、指示を明確に出すことです。そしてその目標達成のために「報連相」を活発化させること、中には「勇気づけ」「認める」といった、上司からの積極的なコミュニケーションの働き掛けも必要になります。そのことが積み重なることによって、個人が成長し、組織も強くなります。
円滑なコミュニケーションによって情報共有を行うには、コミュニケーションの場を積極的に設けることが必要で、本音を引き出す非公式のコミュニケーションの場を設けるなど、管理層が聞く耳を持つことが報連相を活発にする条件となります。
しかし、コミュニケーションルールを明確に規定している企業は多くありません。朝会を毎日実施する企業はありますが、形式的に行われている場合がほとんどで、貴重なコミュニケーションの場が有効的に実施されているとはいえません。