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ものづくり日本! 中小製造業復活のシナリオ
高崎ものづくり技術研究所

2019.08.04

スマイルカーブ

トヨタは20兆円を超える売上高、世界企業ランキングでも10位以内に入る超エクセレント・カンパニーです。ところがこのような状況の中で中小零細企業は、工場を畳んでしまうか、否応なしに海外に出ざるを得ない状況に追い込まれています。

例えば日本の金型企業数は1990年代までは1万4000千社ほどありました。それが2008年にはすでに1万社を切り、その後もじりじりと減少を続け2011年には9200社余りとなっています。中国では、確かな数は把握出来ませんが、すでに2万社近くの金型メーカーが操業し
ていると言われています。そして、中国へ進出した日系金型メーカーも、激しい価格競争の波にさらされ、その優位性はどんどん失われ、市場を奪われています。

残念ながら日本のメーカーには、よい商品を作れば売れるはずであるという思い込みが強く見られます。中小企業は経営資源も乏しく、出来ることは限られますが、従来のようにただ、こつこつと金型を作っている時代では無いことを自覚し、新たな生き残り対応が急務となっています。

我が国ものづくり産業が苦戦している原因は、高い技術力を持ちながら、「企画・マーケティング」「開発・設計」や「販売」「サービス」といったいわゆる「スマイルカーブ」で付加価値の高い工程の競争劣位にあることです。ではどうやって、困難な高付加価値工程への移行を実現していけば良いか具体的に示します。

私が着目しているのは、「ヒト」「組織」を中心とした「ソフトな経営資源」です。金型を、高い技術力によってコツコツと製作するノウハウ。これも技術者に蓄えられた「ソフトな経営資源」の一部だと思います。今まで日本は、この部分で付加価値を見いだし優位性を保って来ました。

今まで付加価値を生み出した「逆スマイルカーブ」の時代はこんな方程式が成り立っていたのではないでしょうか?
   製造技術力+生産管理の仕組み=付加価値

でも、中国でもCADや優秀な工作機械がどんどん導入され、だれでも、ある一定の品質の金型を製作出来るレベルに達しているのです。価格もどんどん下げられ、日系企業は競争力を失ってしまいました。しかしながら、この方程式が成り立つと言う条件のまま、会社の仕組みや根底の考え方が、昔から何も変わっていないのです。

中国の工場に対抗するには、「スマイルカーブ」の上流、あるいは下流の工程で付加価値を獲得することです。当然「組織」の形も変わっていかなければなりません。そして上流や下流の職務を担う「人材」も育てて行かなければなりません。

これからの経営は「組織」「人材」「仕組み」から成る「ソフトな経営資源」を保有し、それを大事に育てていくことが求められます。言うが安し、行うは難しですが、一発逆転の特効薬はあり得ないのです。そんなものが、もしあったとしても他社にすぐに真似されてしまうのがおちです。簡単に真似されないから「ソフトな経営資源」となり得るのです。

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