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経営者を支配する暗黙のルール(組織を支配する暗黙のルール 5)

2020.06.18

こんにちは。
高崎ものづくり技術研究所の濱田です。
当研究所は、中小製造業の現場ですぐ使える品質管理、生産管理、組織・人材管理ツールなどを紹介しています。
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工場の明文化されたルールとして共通の規定と作業の標準の2つを挙げました。その中身はいずれも、実務者レベルが業務遂行上守らなければならないルールが規定されていますが、実は経営者が守るべきルールも存在することも忘れてはなりません。ISO9000では、トップマネジメントの役割が規定されています。しかし、その内容をマニュアル化されることはありません。

1.経営者の守るべきルールとは
ISO9001:2015年版品質マネジメントシステムの5項「リーダーシップ」にはトップマネジメント(経営者)の役割が以下の様に規定されています。
5.1.1 一般 :トップマネジメントは,次に示す事項によって,品質マネジメントシステムに関するリーダーシップ及びコミットメントを実証しなければならない。(以下省略)
5.1.2 顧客重視 :トップマネジメントは,次の事項を確実にすることによって,顧客重視に関するリーダーシップ及びコミットメントを実証しなければならない。(以下省略)
5.2.1 品質方針の確立 :トップマネジメントは,次の事項を満たす品質方針を確立し,実施し,維持しなければならない。(以下省略)

また9項「マネジメントレビュー」では
9.3.1 一般 :トップマネジメントは,組織の品質マネジメントシステムが,引き続き,適切,妥当かつ有効で更に組織の戦略的な方向性と一致していることを確実にするために,あらかじめ定めた間隔で,品質マネジメントシステムをレビューしなければならない。(以下省略)

出典:対訳 ISO 9001:2015(JIS Q 9001:2015)品質マネジメントの国際規格
    QMS規格国内委員会 (監修)

ISO9000の規格では、トップマネジメントの強力なリーダーシップなくして企業の有効な運用はできないと考えられているわけですが、だからと言って、経営者がすべてを「独裁的に」決めて実行してもいいというわけではありません。

2.明文化されない経営者のルール
しかし、どの企業でもISO9000のトップマネジメントに関する規定について、具体的な手順書や業務フローが作成されているわけではありません。そもそも経営の手順をISO事務局が勝手に作って、経営者に守れという訳にも行きませんし、かといって、経営者自らが自分の業務の手順書を作ることはありません。

ISO9000は1987年に初版が制定されて30年以上の間に数度の改訂を経て現在に至っています。その中身は、いわゆる「製品の品質保証」中心の規格から、「品質マネジメント」中心の規格へと変遷してきました。

つまり、当初は製造業の工程で「検査」を実施すること、「是正処置」「予防処置」を実施することなど、製品の品質保証のための規格が中心でしたが、現在では、変化する社内外の状況を捉えて企業全体のマネジメントシステムを適合させ、継続的に改善することを重視するものとなっています。

具体的には、品質方針を通じて、組織が目指すべき方向性を示し、「リーダーシップ」を発揮することや「組織の運営」「コミュニケーション」といった企業経営そのものにより大きな比重が掛かるようになっていると言えます。

しかし、このISO9000の目的の変遷を理解し、実践している経営者はほとんどいないと考えられます。

3.リーダーシップのルール
最近多く聞かれるのは、「営業力を強化して新規顧客を獲得したい」という課題です。国内市場の縮小傾向の中、売り上げが伸びず、さらに取引先からのコストダウン要求によって、利益幅が縮小する危機感から、営業活動の強化を模索する経営者が多く存在します。しかし、従来からの人海戦術の営業では新規顧客獲得がだんだん難しくなっています。

今までずっと取引があった企業から突然発注を打ち切られたり、大幅なコストダウンを迫られたりすることは最近では、当たり前のようになってきました。この場合、従来からの考え方の延長で物事を考えるのではなく「変革を起こすこと」が求められています。変革を成し遂げるには、経営者がリーダーシップを発揮しなければなりません。

松下電機の創業者である松下幸之助氏は、従業員に対して、「松下電器は何をつくるところかと尋ねられたら、松下電器は人をつくるところです。あわせて電気器具もつくっております。こうお答えしなさい」と訓示したそうです。

出典:物をつくるまえに人をつくる――人の育て方、活かし方〈1〉
松下幸之助.com  https://konosuke-matsushita.com/keywords/hr-development/no1.php

つまり松下幸之助氏は、第一に社員として貴重な人材を抱えているのですから、それを組織力アップのために生かしていくことを考えました。そして第二に、何に注力して事業を行っていくのか、方向性を明確に示し、そこに人材を集中して投入していく必要があると考えたのです。

しかし、「変革」の方向は企業によってそれぞれ異なりますから、例えば、他社より優れた設備を導入し優れた製品を製造することで、差別化を図ろうと考える経営者もいるかもしれません。どの方法が正解ということではなく、経営者が明確に方向性を打ち出し、社員に周知するとともに、社員の共感を得ること、信頼を得ながら、ともに前進していくことが重要ではないでしょうか。

4.方針管理と方針展開のルール
(1)方針管理とは
方針管理とは何かに関して以下の解説文を紹介します。
「まず経営者が、“こうやってみたい”“こうありたい”といった希望や理想を将来ビジョンとして力強く発表し、その経営を何のために行なっていくのか、いかにして行なっていくのかという基本の考え方、経営理念と具体的な目標を社員に明示する。それがやはり事業活動の第一歩といえよう。

それらが力強く社員に語りかけられ、訴え続けられて、組織のすみずみまで浸透し、それぞれの目指すべき方向が明確になれば、それが精神的支柱、判断のよりどころとなって、経営者のみならず社員の行動、信念に力強さが生まれてくる。目標を達成しようとする意欲と社員間のまとまりも生まれ、全社一丸となって、その実現に努力するようになる。」

二十一世紀の日本と世界の繁栄を支え続けることができる企業となるために、今、それぞれの経営者には、人間いかにあるべきか、人間社会いかにあるべきかという、それぞれの哲学から発した的確な将来ビジョン、正しい経営理念を確立し、社員に明示していくことが何よりも強く求められているといえよう。

出典:"初めに言葉ありき"――リーダーの心得(2)
松下幸之助.com  https://konosuke-matsushita.com/column/cat64/leader2.php

方針管理とは、経営方針を達成するための取り組みを言います。企業トップから発せられた中長期のプランは、部門や個々の業務まで順々に落とし込んでいくことになります。ただし、全社の経営計画をそのまま現場に落としても対応できないために部門ごとに、もっと具体的な目標設定とアクションプランを立てて実行することが必要となり、そのことを「方針展開」を行います。

(2)方針展開
①中期方針テーマの深耕
中・長期プランは、経営者の「こうありたい」「こうあるべき」とういう会社の将来の方向性を示すものであって、具体的なプランは、これを受ける工場長、部長、課長によって、具体的なアクションプランに落とし込む必要があります。

例えば、「2年後に生産性を50%アップする」「3年後に流出不良は0件にする」といった目標を設定し、これを実現するための人材育成・強化、設備導入などの具体的な計画を立てる必要があります。そこで2年後、3年後を考えて、今から準備を開始しなければなりません。
  組織:ある部門で担当するのか、プロジェクトを結成するのか?
  人材:リーダーは、メンバーは何人必要か?人材が不足していないか?
  検討内容:何を(4M)いつまでにどのような方法で実現するか具体案を検討
  費用:設備導入、人材強化などの費用見積り
  期間:検討期間(現状・問題点)、対策試行期間等

 このように、中・長期プランのすべての項目について、まず上記の青写真を作成し準備を進めていきます。

②今年度目標設定
中・長期プランのうち、今年度に実現すべきテーマを今年度目標に設定し計画を完遂させるための活動を行います。ここで目標を掲げたテーマは、必ず完遂させる必要があります。つまり、2年後3年後を見据えて、周到に準備を進め、確実な方策を固めてから本年度計画として一気に完遂させます。

ポイントは、毎年未達の年度計画では意味がないということです。よくありがちな未達の場合は、来年に持ち越し、継続して取り組むという考えは、決してうまくいきません。これではPDCAを回していることにはならず、このような甘い考えで毎年お茶を濁している例があまりに多いというのが一般的な企業の方針管理、方針展開の実態です。

(3)PDCAだけでは変革は成し遂げられない
ISO9000では、PDCAを回すことが求められています。
「計画(Plan)→実施(Do)→見直し(Check)→改善(Act)」という組織活動のサイクルを回して「継続的改善」を行っていくことが要求事項として定められています。しかしこの活動は個別の課題を解決するためのツールとして使用されるのであって、現状の延長線上の小改善を行うツールと考えられ、現在の企業環境の中で経営の方向性を決定する方針管理には適用できません。

改善を積み上げていく従来型のPDCAマネジメントサイクルでは企業の変革を成し遂げることは難しいと考えられます。つまりQCストーリーに例えると「問題解決型」ではなく、経営者が強力なリーダーシップを発揮する「課題達成型」の取組が必要となります。

5.「STPDサイクル」と「SWOT分析」のルール
そこで、変革を成し遂げるための「STPDサイクル」と「SWOT分析」の導入を検討してみます。
STPDとは、
See:現状を知る、あるがまま見る
Think:現状を知った上で考える(=いきなり計画しない)
Plan:考えた結果を実現するように計画する
Do:計画を実行する

の頭文字を取ったものであり、経営視点で「See」「Think」のステップが必要であり、まさに経営者のリーダッシップを発揮する場面がここにあると考えられます。思い込みをなくして外部環境や内部環境を客観的に見る(See)と、自社の置かれている現実が見えてくるのです。

SWOT分析は、自社の強み(Strength)、弱み(Weakness)を見極め市場の機会(Opportunity)を活かし、脅威(Threat)に対抗するという分析手法です。このような分析を行い、現実を正しく見た上で考え(Think)、方向性を見出します。ビジョンとは、単に夢を語るということではなく、事実を分析し、戦略的に解決策を導き出すことであり、そのためのルールが「STPD」「SWOT」なのです。

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